賃貸物件においては、原則的に「原状回復義務」が発生しています。
簡単に言えば、退去時に「入居時と同じ状態に戻す」ことを意味しています。当然ながら一部内装などは、劣化や破損などしているケースがありますので、その際は契約書に記載の通り、劣化や破損が「どちらの過失責任なのか」確認した上で、退去費用を決定します。
賃貸物件の壁紙に関しては、基本的に「オーナーさんもしくは管理会社」が選んだものを貼ってあるのが一般的で、しっかりとリフォームやリノベーションをしている物件は、室内がおしゃれになっているので、借主でもあるお客様は「壁紙に満足」していると思われますが、壁紙の好みは「十人十色」であることから、もしかするとごく一部の方は、オーナーさんなどが選んだ壁紙が「気に入らない」と感じているはずです。
そこで、今日のテーマにもなっているのですが、もし入居期間中に「借主がオーナーさんの許可を得ないまま、壁紙を勝手に新しく交換」した場合、その壁紙は退去時どうなるのか?
そもそもご入居者様が、勝手に交換する行為は、認められているのかどうかについて、お話していきたいと思います。
目 次
1.貸主の許可なく壁紙交換した場合は、契約違反
2.壁紙の価値が上がった場合、どうなるのか?
3.無断工事は認めないケースがあります
4.まとめ
1.貸主の許可なく壁紙交換した場合は、契約違反
賃貸借契約が成立した後の部屋に関しては、借主であるお客様が、室内を丁寧に使用しなければならない義務=善管注意義務が発生します。
また賃貸借契約においては、オーナーさんの許可なく勝手に「室内の改装など」を行う行為を禁止しています。ですので、今回の「借主が勝手に壁紙交換をする行為」は、賃貸借契約違反となりますので、もし退去時に原状回復ができなければ、修繕費用が発生する恐れが出てきます。
2.壁紙の価値が上がった場合、どうなるのか?
近年ではDIYが流行っていているので、お客様の中には「内装屋さんが行うような、壁紙交換」をすることができる方も多いのではないでしょうか?
賃貸で使用されている壁紙には、大きく2つに分かれていて、よく使用されている「量産タイプ」のものと、ワンランク上の「1000番クロス」があります。
一般的な賃貸物件では、量産タイプの壁紙を使用していることが多く、お客様の中には、ワンポイントだけ「おしゃれな壁紙」を使いたいと思っている方もいるはず。そこで、もし借主が部屋の一面だけ「1000番クロス」を貼った場合、当然ながら「お部屋の価値」は上がることになります。
実は、法的に「賃貸の部屋改良工事を行った結果、部屋の価値が上がったことが客観的に認められた」場合、有益費償還請求権という権利が発生し、回収費用を賃貸人であるオーナーさんに請求することができます。
ただし、許可なく無断で工事を行ったことに対しては、賃貸借契約に違反していることには、変りはありません。
3.無断工事は認めないケースがあります
お部屋を貸すオーナーさんや管理会社では、たとえ借主が「内装などの知識」があったとしても、無断で壁紙交換をしてしまうと、本当にしっかりと施工しているかどうか、判断することができませんので、たとえ室内がグレードアップしたからと言って、有益費償還請求権に基づいて、改修費用を請求してきても、断ることが予想されます。
実際に、裁判でも「オーナーさんに無断」で改修工事を行った場合には、有益費償還請求権が認められないケースもありますので、権利があるからといって、無断改修は絶対にNGです。
この件について、先程管理会社に確認したところ、法的には「有益費償還請求権」は認められるかもしれないけれども、このような事態になってしまうと、借主が何でもしてもいいというようになってしまい、適正な管理を行うことができないことから、万が一資産価値を高めるような改修工事を行ったとしても、退去時には原状回復を求めるとのことです。
4.まとめ
賃貸物件は、あくまでも借り物であることから、お客様が勝手に改修工事などを行うことはNGとなっています。また改修工事を行う場合は、オーナーさんが指定する業者さんに工事依頼することになっていることから、たとえお客様が知識があったとしても、無断で工事などしてしまうと、後々トラブルになってしまいますので、絶対に避けてください。
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